「展示会営業®」で得られる多面的な効果
展示会営業®は、単に「新規顧客を獲得する」という目的だけでなく、企業経営全体に多面的な効果をもたらします。本書『展示会のプロが見つけた 儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない理由!』の著者・清永健一氏は、1,000社以上の支援実績から、展示会営業®がもたらす具体的なメリットを体系化しています。
「営業コストの削減」「商談効率の向上」「ブランド力の強化」「製品開発へのフィードバック」「組織力の向上」など、展示会営業®の効果は多岐にわたります。今回は、これらのメリットを具体的な数字や事例とともに紹介し、あなたの会社でも実践できるノウハウをお伝えします。展示会営業®を導入することで、どのような変化が期待できるのでしょうか?
メリット①:営業コストの大幅削減と効率化
展示会営業®の最も明確なメリットの一つが、営業コストの削減です。清永氏のコンサルティング先企業のデータによれば、従来の訪問営業と比較して、展示会営業®では「1件あたりの見込み客獲得コスト」が平均で40〜60%削減されています。
例えば、ある産業機械メーカーの場合、従来の訪問営業では1件の有望見込み客を獲得するのに約5万円のコストがかかっていました(営業担当者の人件費、交通費、営業資料代などを含む)。しかし、展示会営業®に切り替えたところ、1件あたりのコストが約2万円に低減。さらに、獲得した見込み客の質も向上し、成約率が1.5倍に上昇しました。
コスト削減の要因は主に3つあります。
第一に、「移動時間と交通費の削減」です。展示会では、見込み客が自ら足を運んでくるため、営業担当者が各地を訪問する必要がありません。
第二に、「効率的なスクリーニング」が可能になります。展示会では、短時間で多くの見込み客と接触でき、その場で有望度を判断できます。
第三に、「営業資料の効率的な活用」です。展示会用に作成した質の高い営業ツールを集中的に活用できます。
清永氏は「展示会営業®は、単なるコスト削減ではなく、営業活動の質を高めながらコストを下げる『一石二鳥』の手法」と説明しています。特に中小企業にとって、限られた営業リソースを最大限に活用できる点が大きなメリットです。
メリット②:商談の質と効率の飛躍的向上
展示会営業®のもう一つの大きなメリットは、商談の質と効率が飛躍的に向上することです。清永氏の調査によれば、展示会で獲得した見込み客は、通常の営業活動で獲得した見込み客と比較して、成約率が平均1.5〜2倍高いというデータがあります。
なぜ展示会で獲得した見込み客の質が高いのでしょうか。その理由は主に4つあります。
第一に、「来場者の目的意識の高さ」です。展示会に足を運ぶ来場者は、すでに一定の興味や課題意識を持っています。つまり、完全な「コールドコール」よりも、はるかに商談が成立しやすい状態なのです。
第二に、「製品やサービスの実物確認」が可能な点です。展示会では、カタログや説明だけでなく、実際の製品やデモンストレーションを通じて、価値を直接体感してもらえます。ある精密機器メーカーは、展示会で実機デモを行うことで、来場者の理解度と関心度が大幅に向上し、商談の進行スピードが従来の半分の時間で済むようになりました。
第三に、「意思決定者との直接対話」の機会が増えることです。展示会には、部門責任者や経営層など、意思決定権を持つ人物が来場することも多く、通常の営業活動では難しい「キーパーソン」との接点を持つことができます。
第四に、「競合比較の効率化」です。来場者は展示会で複数の競合製品を比較検討できるため、自社製品の強みを直接アピールできる絶好の機会となります。
ある建材メーカーの事例では、展示会後の商談において、通常の営業活動と比較して「初回訪問から成約までの期間」が平均で30%短縮されました。これは、展示会での質の高い初期接触により、信頼関係の構築が加速されたためです。
清永氏は「展示会営業®は、営業プロセスの『入口』と『出口』を同時に改善する効果がある」と説明しています。つまり、より質の高い見込み客との出会い(入口)と、より効率的な成約プロセス(出口)の両方を最適化できるのです。
メリット③:ブランド力と認知度の効果的な向上
展示会営業®の第三のメリットは、企業のブランド力と認知度を効果的に高められることです。特に中小企業にとって、限られたマーケティング予算でブランド認知を高めることは大きな課題ですが、展示会はその効果的な解決策となります。
清永氏のクライアント企業の調査によれば、業界の主要展示会に継続的に出展している企業は、出展していない同規模の企業と比較して、業界内での認知度が平均2.5倍高いというデータがあります。
ブランド力向上の具体的なメカニズムは以下の通りです。
第一に、「業界プレゼンスの確立」です。主要展示会に出展すること自体が、「この業界の主要プレイヤーである」という認識を市場に与えます。ある特殊金属加工メーカーは、業界最大の国際展示会に3年連続で出展したことで、「この分野の専門企業」としての地位を確立。問い合わせ数が出展前と比較して3倍に増加しました。
第二に、「メディア露出の機会」です。展示会には業界専門メディアが取材に訪れることも多く、記事掲載などの二次的な露出効果も期待できます。ある環境技術ベンチャーは、展示会での革新的な製品発表が業界誌に取り上げられ、その後の問い合わせ急増につながりました。
第三に、「競合との差別化機会」です。展示会では、競合他社と同じ土俵で勝負することになりますが、これは自社の強みを直接アピールする絶好の機会でもあります。ブースデザイン、プレゼンテーション、スタッフの対応など、あらゆる面で差別化を図ることで、来場者の記憶に残る企業となることができます。
ある中小の食品機械メーカーは、大手競合が多数出展する展示会で、「実演コーナー」を充実させることで差別化に成功。大手には真似できない柔軟な対応と技術力をアピールし、展示会後の引き合いが前年比2倍に増加しました。
清永氏は「展示会は、広告やウェブマーケティングとは異なる『体験型ブランディング』の場」と説明しています。つまり、来場者に実際の製品や企業文化を体感してもらうことで、より深い印象と信頼を獲得できるのです。特に技術力やサービス品質が強みの中小企業にとって、この「体験型ブランディング」は非常に効果的な手法と言えるでしょう。
メリット④:市場の生の声を製品開発に活かす好循環
展示会営業®の第四のメリットは、市場の生の声を直接収集し、製品開発やサービス改善に活かせることです。これは、営業活動と製品開発の好循環を生み出す重要な効果です。
清永氏は「展示会は最高の市場調査の場」と表現しています。通常の市場調査では多額のコストと時間がかかりますが、展示会では短期間で多くのユーザーから直接フィードバックを得ることができます。
市場の声を活かした成功事例として、ある産業用センサーメーカーの例が挙げられます。この企業は展示会で来場者から「防水性能の向上」を求める声を多数受け、その場でエンジニアと営業が情報を共有。展示会終了後すぐに開発会議を開催し、わずか3ヶ月で防水性能を強化した新モデルを開発しました。この迅速な対応が顧客からの信頼獲得につながり、新モデルは発売から半年で年間販売目標の80%を達成する大ヒット商品となりました。
また、展示会では競合製品に対する来場者の反応も直接観察できます。ある建材メーカーは、展示会で競合ブースの人気コーナーを分析し、自社製品に足りない機能を特定。次期モデルに反映させることで、市場シェアを5%向上させることに成功しました。
清永氏は、展示会で得た市場の声を効果的に活用するための3つのポイントを挙げています。
第一に、「その場での記録の徹底」です。来場者の声をその場でデジタルツールなどを使って記録し、後で分析できるようにします。
第二に、「開発部門の巻き込み」です。可能であれば開発担当者も展示会に参加させ、ユーザーの声を直接聞く機会を作ります。
第三に、「フィードバックの仕組み化」です。展示会後に必ず振り返りミーティングを行い、得られた情報を製品開発に活かすプロセスを確立します。
ある食品加工機械メーカーは、展示会ごとに「顧客の声データベース」を更新し、製品改良の優先順位付けに活用。その結果、新製品の市場受容性が大幅に向上し、発売後の仕様変更コストが70%削減されました。
このように、展示会営業®は単なる販売機会ではなく、製品開発サイクルの重要な一部として機能します。特に開発リソースの限られた中小企業にとって、効率的に市場の声を収集できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
メリット⑤:組織力の向上と社内の一体感醸成
展示会営業®の第五のメリットは、組織力の向上と社内の一体感醸成です。これは数字には表れにくいものの、企業の長期的な成長にとって非常に重要な効果です。
清永氏は「展示会は全社を挙げたプロジェクト」と位置づけています。営業部門だけでなく、製品開発、マーケティング、経営層など、様々な部門が一つの目標に向かって協働することで、部門間の壁を越えた連携が生まれます。
ある精密機器メーカーの事例では、年に1回の主要展示会を「全社プロジェクト」と位置づけ、3ヶ月前から週1回の全体ミーティングを実施。営業、開発、製造、マーケティングの各部門が一堂に会し、展示会での成功に向けて協力しました。その結果、部門間のコミュニケーションが活性化し、展示会後の商談フォローもスムーズに進行。最終的に、展示会を契機に始まったプロジェクトの成約率が前年比40%向上しました。
また、展示会は若手社員の成長機会としても重要です。ある中小製造業では、展示会の準備段階から若手社員を積極的に参加させ、当日も来場者対応を任せることで、短期間での成長を促進。展示会後のアンケートでは「自社製品への理解が深まった」「顧客の声を直接聞くことで市場ニーズを実感できた」といった声が多く聞かれました。
清永氏は、展示会を通じた組織力向上のための3つのポイントを挙げています。
第一に、「明確な目標設定と共有」です。展示会の目標を数値化し、全社で共有することで、一体感が生まれます。
第二に、「部門横断チームの編成」です。展示会準備のためのプロジェクトチームを部門横断で編成し、日常業務では接点の少ない社員同士の協働を促進します。
第三に、「成果の可視化と共有」です。展示会後の成果を全社で共有し、貢献者を評価することで、次回への意欲を高めます。
ある食品メーカーでは、展示会の成果を「見える化」するダッシュボードを社内に設置。リアルタイムで商談状況や成約状況を共有することで、営業部門以外の社員も展示会の重要性を実感。結果として、次回展示会への全社的な協力体制が強化されました。
清永氏は「展示会営業®は、単なる営業手法ではなく、組織変革のきっかけにもなる」と強調しています。特に、部門間の連携が課題となっている中小企業にとって、展示会を通じた一体感の醸成は、長期的な競争力強化につながる重要なメリットと言えるでしょう。
次回予告
次回は「展示会営業®で成功するための具体的な実践ノウハウ」を解説します。出展前の準備から当日の運営、そして効果的なフォローアップまで、すぐに使える実践テクニックをお届けします。