伝説の『ボタニカル・ライフ』から25年、待望の最新作が登場
1999年に講談社エッセイ賞を受賞し、園芸ブームの火付け役ともなった名著『ボタニカル・ライフ』。その著者であり、作家・クリエイターとして多方面で活躍するいとうせいこう氏が、再び植物との熱い日々を綴った最新刊『日日是植物』(マガジンハウス)を2026年2月26日に上梓した。
本作は発売直後から大きな反響を呼び、Amazonの売れ筋ランキング(「庭園・庭づくり」「ガーデニング」カテゴリ)で1位を獲得。書店からの追加注文が相次いだことで、異例のスピードで重版が決定した。なぜ今、いとう氏が描く「植物との暮らし」が、これほどまでに多くの人々の心を捉えているのだろうか。
ベランダから室内へ。変化する「都市型園芸」のリアル
かつて「ベランダ園芸家」を自称していたいとう氏だが、本作ではそのスタイルに大きな変化が見られる。近年の猛暑や予測不能な気候変動の影響を受け、植物たちの主戦場はベランダから「室内」へと移りつつあるのだ。
本書は、東京新聞で7年間にわたり連載された人気コラムを再構成したもの。玄関のわずかな採光を逃さず鉢を置き、リビングには組み立て式のビニールハウスを鎮座させ、壁にはエアプランツを吊るす……。都会のマンションという限られた空間の中で、いかに植物と共生するかを模索する姿は、現代の都市生活者にとって非常にリアリティのあるものだ。
さらに、自分自身に胡蝶蘭を贈るという前代未聞のエピソードなど、いとう氏ならではのユーモアと、生命の神秘に対する畏敬の念が交錯する内容は、単なるハウツー本を超えた一級のドキュメンタリーとなっている。
YouTubeでの「選書」も話題。深まる植物への知的好奇心
本書のヒットを後押ししている要因の一つに、メディアでの露出がある。特に、YouTubeチャンネル「出版区」の人気企画「本ツイ!-本屋ついてって1万円あげたら何買うの?-」にいとう氏が出演した回は大きな話題となった。
本屋を巡りながら次々と書籍を手に取るいとう氏の姿からは、植物だけにとどまらない圧倒的な「知への嗅覚」が感じられる。植物を育てることは、単なる趣味ではなく、生命の仕組みや歴史、そして自分を取り巻く環境を深く知るための知的冒険である――。そうした著者のスタンスが、動画を通じて若い世代を含む幅広い層に伝わり、本書への興味を加速させたといえる。
癒やしを超えた、生命との「対話」を綴る
『日日是植物』が描き出すのは、単なる「癒やしのグリーン」ではない。時には植物の生命力に驚かされ、時には枯らしてしまう切なさにしんみりし、時には未知の品種との出会いに胸を躍らせる。そこにあるのは、一方的な管理ではなく、植物という他者との濃密な「対話」だ。
「ベランダ園芸家改め、室内園芸家」を名乗るいとう氏が、7年の歳月をかけて記録した愛溢れるドラマティックな日々。本書を読めば、窓辺に置かれた一鉢の植物が、これまでとは違った輝きを持って見えてくるに違いない。
【書誌情報】
書名:日日是植物
著者:いとうせいこう
発売日:2026年2月26日
価格:1,870円(税込)
発行:株式会社マガジンハウス