土俵を彩る最高峰の芸術、その知られざる舞台裏に迫る
日本の国技であり、長い歴史を誇る「大相撲」。土俵の上で繰り広げられる熱戦はもちろんのこと、観客の目を釘付けにするのが、力士たちが身に纏う絢爛豪華な衣装です。なかでも、土俵入りで締める「化粧まわし」や、場所入りで着用する「染め抜き着物」は、選ばれた力士のみが許される誇り高き衣装であり、日本が世界に誇る伝統技術の結晶でもあります。
2026年1月5日、この相撲界独自の衣装文化に焦点を当てた、これまでにない一冊が誕生しました。それが『相撲とデザイン SUMO and DESIGN』(株式会社トゥーヴァージンズ刊)です。本書は、力士の個性を際立たせる「デザイン」という切り口から、相撲の美学を深掘りした初のアートブックとなっています。
1点数百万〜数千万円?「化粧まわし」という唯一無二の工芸
十両以上の関取のみが着用できる化粧まわしは、重厚な刺繍や金銀糸、時には宝石までもが散りばめられた「歩く芸術品」です。本書では、普段は遠くの客席からしか眺めることのできない化粧まわしのディテールを、高精細な写真とともに詳しく解説しています。
特に注目すべきは、相撲博物館に所蔵されている歴史的な逸品の紹介です。雷電為右衛門が用いた伝説の衣装や、真珠やルビーが埋め込まれた超豪華なものまで、時代を超えて受け継がれる「美」の変遷を辿ることができます。また、白鵬(現・宮城野親方)や大の里、尊富士といった現代の力士たちが着用する最新のデザインも多数掲載。スポンサーの想いや、力士自身のこだわりが反映された「設計図」や「下絵」までもが公開されており、その製作過程の緻密さに驚かされます。
個性が光る「染め抜き着物」の世界
もう一つのテーマである「染め抜き着物」も、相撲文化の奥深さを象徴するアイテムです。力士のしこ名が白く染め抜かれ、季節感あふれる大胆な絵柄が描かれた着物は、力士それぞれのキャラクターを表現するキャンバスでもあります。
本書では、和装装飾プロデューサーやデザイナーの監修のもと、その構造や着用方法を丁寧に解説。さらに、照ノ富士の「黒龍」や阿炎の「燃える炎」など、力士たちが自らを鼓舞し、ファンを魅了するために選んだ意匠の数々を、着姿写真とともに紹介しています。伝統的な友禅染めの技法を用いながら、現代的な感覚でアップデートされ続けるデザインの世界は、相撲ファンならずともデザイン関係者にとっても刺激的な内容といえるでしょう。
職人の魂と、現役力士・玉鷲関の意外な素顔
本書の魅力は、単なる写真集にとどまらない「現場への取材力」にあります。化粧まわしの仕立て職人や、京友禅の老舗「千總」、締め込みの織物工房など、通常は部外者が立ち入ることのできない製作現場を徹底取材。職人たちのこだわりや、1本の化粧まわしが完成するまでの途方もない労力が、貴重な写真とともに綴られています。
また、角界屈指の「手芸男子」としても知られる現役力士・玉鷲関へのスペシャルインタビューも大きな見どころです。自ら針を動かすこともある玉鷲関ならではの視点で語られる「衣装の魅力」は、読者に新たな発見を与えてくれます。
伝統と革新を繋ぐ、日英バイリンガル仕様
オールカラー208ページにわたる本書は、解説文が日英バイリンガルで表記されており、海外の相撲ファンや日本の伝統文化に関心を持つ層にも広く訴求する内容となっています。
「相撲」という伝統の中に息づく、美意識とクラフトマンシップ。力士が命を懸けて戦う土俵を支えるのは、こうした美しき衣装を紡ぎ出す人々の情熱でもあります。本書は、相撲を「スポーツ」としてだけでなく、「デザイン」や「アート」という新たな視点から楽しむための、まさにバイブルと言える一冊です。
【書誌情報】
書名: 相撲とデザイン SUMO and DESIGN
編: トゥーヴァージンズ編集部
協力: 日本相撲協会ほか
発売日: 2026年1月5日(月)
ページ数: 208ページ(オールカラー、日英バイリンガル表記)
定価: 4,950円(税込)
発行: 株式会社トゥーヴァージンズ