書店を救う「卸率50%」の挑戦!風旅出版×藤原印刷が贈る、新時代の本作り“クラフトプレス”とは?

株式会社Huuuuが運営する出版レーベル「風旅出版」は、新刊2冊の同時刊行に合わせ、書店向けに「通年・卸率50%(5掛け)」という異例の施策を開始しました。長野県松本市の藤原印刷とタッグを組み、既存の流通に依存しない持続可能な「本作り」と、書店との新たな信頼関係の構築を目指します。


出版界の常識を覆す「5掛け」という決断

出版不況や物流コストの上昇が深刻化する中、本屋という場所を維持することの難しさが日々増しています。従来の出版流通では、書店の利益率は20%前後が一般的。そこから光熱費や人件費を差し引けば、経営が困難を極めるのは想像に難くありません。

そんな現状に一石を投じるのが、長野県長野市を拠点に活動する編集チーム「株式会社Huuuu」の出版レーベル「風旅出版」です。彼らが2025年12月末に刊行した新刊2冊、『編集の編集の編集!!!!』と『いきなり知らない土地に新築を建てたい』において打ち出したのは、書店向け卸率「通年50%(5掛け)」という驚きの条件でした。

通常、取次を通した流通では実現不可能なこの数字は、「本屋が持続可能であるための経済圏」を自分たちの手で作ろうとする、情熱的な挑戦の形です。

「クラフトプレス」が提案する、手触りのある本作り

このプロジェクトを支えるのは、長野県松本市の老舗、藤原印刷株式会社です。同社が提唱する「クラフトプレス」という概念が、今回の取り組みの核となっています。

「クラフトプレス」とは、クラフトビールやクラフトジンのように、作り手の熱量や地域の個性を反映させ、小規模ながらもこだわり抜いた本作りを指します。単に情報を伝える媒体としての「本(Book)」ではなく、作るプロセスそのものに価値を置き、物理的な美しさや手触りを追求する「本作り(Press)」への転換です。

今回の新刊2冊も、藤原印刷の職人たちとの緊密な連携により、紙の質感や判型、印刷バリエーションを今の時代に合わせて再設計されています。コストを抑えるためにフルカラーを避け、単色印刷を採用しながらも、デザイナーのこだわりと印刷技術を融合させることで、所有欲をくすぐる唯一無二の佇まいを実現しました。

新刊2冊が描き出す「編集」と「衝動」の記録

今回、5掛け販売の対象となるのは、性格の異なる2つの作品です。

1. 『編集の編集の編集!!!!』

阿部光平、光川貴浩、徳谷柿次郎、堤大樹という4人の編集者による共著。効率化が求められる現代において、あえて手間や摩擦の中に飛び込む彼らの姿を追った、ドキュメンタリー的な一冊です。「編集という営み」を再定義しようとする熱い議論が、読者のクリエイティビティを刺激します。

2. 『いきなり知らない土地に新築を建てたい』

全国47都道府県を行脚する編集者・徳谷柿次郎による最新刊。制作期間わずか2カ月という「衝動」から生まれた本作は、自身のウェブサイトで綴り続けた日記をベースにしています。SNSのシェアボタンすらない、飾らない言葉で綴られた物語は、情報過多な現代において「自分自身の言葉」を持つことの意味を問いかけます。

作り手の顔が見える「関係性の経済」へ

なぜ、ここまでリスクを取ってまで卸率50%にこだわるのでしょうか。そこには、代表の徳谷柿次郎氏が全国を旅する中で感じた「作り手と読み手の距離」への危機感があります。

「本を仕入れる理由も、直接買い求める理由も、作り手の顔が見えるかどうかが大きい」

風旅出版は、大規模なプロモーションや取次ルートに依存するのではなく、全国各地の独立書店や、著者のファンとの直接的なつながりを重視しています。直販での売上によって全体のバランスを取りつつ、地域の文化拠点である書店に十分な利益を還元する。この循環こそが、文化を守るための「持続可能な経済」であると彼らは信じています。

まとめ:本を「所有する喜び」を再び

デジタルシフトが進む中で、紙の本に求められる価値は変容しています。風旅出版と藤原印刷が挑むのは、利便性の追求ではなく、非効率の中に宿る「豊かさ」の追求です。

書店に足を運び、作り手の体温を感じる一冊を手に取る。そんな当たり前だった体験を、より強固な信頼関係のもとでアップデートしていく。今回の「5掛け」という挑戦は、出版業界だけでなく、何かを「作る」すべての人にとって、新しい未来へのヒントになるはずです。

新刊・卸情報】

『編集の編集の編集!!!!』

価格:1,500円(税込)/ 卸値:750円(税込)

いきなり知らない土地に新築を建てたい』

価格:2,000円(税込)/ 卸値:1,000円(税込)

取扱条件: 卸率50%(通年)

詳細・問い合わせ: 株式会社Huuuu(風旅出版)


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