出版業界において、電子書籍市場は年々拡大を続けていますが、その一方で多くの「埋もれた名著」がデジタル化の波に取り残されています。特に中規模以下の出版社や個人著者にとって、電子書籍(EPUB)の制作は、コストや専門知識、制作体制の確保といった高いハードルが立ちはだかっていました。
こうした課題を解決すべく、企業向け電子書籍サブスクリプションサービス「Sharelot(シェアロット)」を運営する株式会社MOCHIは、2025年12月18日、PDFデータからワンストップで電子書籍を制作する支援サービス「Sharelot Publishing Support」の提供を開始しました。
「PDFさえあればいい」という手軽さが拓く新しい選択肢
本サービスの最大のコンセプトは、「PDFがあれば、あとはお任せ」というシンプルさにあります。通常、電子書籍を制作するにはDTPデータの再構成や複雑なレイアウト調整が必要になることが多く、制作会社への依頼コストがネックとなって電子化を断念するケースが少なくありませんでした。
「Sharelot Publishing Support」では、既に存在する販売用PDF(1ページ=1ページ構成のもの)をそのまま活用し、各ページを画像として配置する「固定レイアウト型EPUB」を制作します。これにより、図表や複雑な段組、こだわりのデザインが含まれる書籍でも、紙面の雰囲気を忠実に再現した電子化が可能になります。
また、単に画像化するだけでなく、見出し構造に基づいた目次設定やメタデータの設定、さらには300dpi以上の高解像度対応など、電子書籍プラットフォームを自社運営してきた同社ならではの運用ノウハウが詰め込まれています。ページ順のチェックや実機での表示確認といった実務レベルの検品も含まれており、出版社は高品質なデータを手軽に手にすることができます。
試験的な電子化を後押しする、画期的な「先行配信プラン」
特筆すべきは、出版社のニーズに合わせた柔軟な料金体系です。中でも注目されるのが「Sharelot先行配信プラン」です。
このプランは、制作したEPUBファイルを1年間、同社が運営する「Sharelot」および「Sharelot書店」でのみ独占利用することを条件に、制作コストを極限まで抑えたものです。基本料金2,000円にページ単価20円(いずれも税別)を加えた設定となっており、例えば100ページの書籍であればわずか4,000円程度で電子化が可能になります。
「電子書籍としてどの程度の需要があるか未知数で、大きな投資はできない」と二の足を踏んでいたタイトルにとって、このプランは「市場調査を兼ねた試験的な販売」としての絶好の機会を提供します。1年経過後は制約が解除され、他の主要電子書店でも自由に販売できるようになるため、長期的なラインナップ拡充の第一歩として非常に有効です。もちろん、最初から全プラットフォームで展開したい場合には、利用制限のない「汎用EPUBプラン」も用意されています。
「本の未来」を見据えたMOCHIのビジョン
株式会社MOCHIは、「本の未来を、共創する。」をミッションに掲げるスタートアップです。代表の戸枝良太氏は、サービス提供の背景として、既存のPDFはあるもののコストや手間の問題で電子化が先送りにされ、読者に届けられていないコンテンツが数多く存在することを指摘しています。
本サービスは単なるデータ制作代行ではありません。学会誌や紀要のオンライン化、企業研修テキストの電子書籍化、さらにはシリーズ全巻の一斉デジタル化など、あらゆる「知の資産」を循環させるためのインフラとなることを目指しています。
情報のデジタル化が進む現代において、紙の本が持つ価値をいかにデジタル空間へ継承し、新しい読者との接点を作るか。「Sharelot Publishing Support」は、出版社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を技術とコストの両面から支え、本という知の源泉が枯れることなく次世代へつながる未来を切り拓いていくことでしょう。
サービス概要
サービス名: Sharelot Publishing Support(シェアロット パブリッシングサポート)
提供開始日: 2025年12月18日
対象: 出版社、著者、教育・研究機関、企業など
対応形式: 固定レイアウト型EPUB(PDF原稿から制作)
公式サイト: https://sharelot.jp/publishing-support
運営会社: 株式会社MOCHI(東京都墨田区、代表取締役:戸枝良太)
株式会社MOCHIは、企業向け電子書籍読み放題サービス「Sharelot」を開発するスタートアップ企業です。顧客の抱える問題の解決をしながら、出版社や著者の方々にとってもプラスになるビジネスモデルの社会実装に取り組んでいます。