【大賞作、舞台へ】朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』開幕!熱狂の初日公演レポート

シリーズ累計150万部を突破した本屋大賞受賞作、宮島未奈の小説を舞台化した朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』が2025年9月13日に初日を迎えました。岩田陽葵・紡木吏佐・梅田修一朗ら日替わり豪華声優陣が、「声」だけで成瀬あかりの突き抜けた青春と熱量を鮮やかに描き出し、観客の心を揺さぶった公演のオフィシャルレポートをお届けします。


誰もが心を揺さぶられた「成瀬あかり」の熱量

「こんな主人公に会ったことがない」と読者を驚かせ、共感させ、笑わせてきた、宮島未奈氏による本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』(新潮文庫刊)。滋賀・大津を舞台に、自分が決めたことは必ずやり遂げる女子高生・成瀬あかりの突き抜けた行動力と、周囲を巻き込む姿を描いた本作は、続編と合わせてシリーズ累計150万部を超える社会現象を巻き起こしています。

その国民的な人気作が、人気と実力を兼ね備えた声優陣による日替わりキャスト制という豪華な構成で、朗読劇としてステージに立ち上がりました。2025年9月13日(土)~15日(月祝)に草月ホールで上演された朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』は、初日公演から観客を魅了し、大きな熱狂をもって迎えられました。静かに始まった朗読劇が終わりに近づく頃には、劇場中が「成瀬あかり」という存在の圧倒的な熱量に包まれていた、その初日公演の様子をレポートします。

役柄の「芯」を捉えた日替わりキャストの妙技

初日公演では、成瀬あかり役を岩田陽葵、島崎みゆき役を紡木吏佐、そして西浦航一郎役を梅田修一朗が担当。朗読劇という形式の制約を超え、声優陣は声の力だけでキャラクターたちの感情のうねり、青春の日々を鮮やかに描き出しました。

成瀬あかりを演じた岩田陽葵は、一見突飛に見える成瀬の行動の**芯にある「まっすぐさ」や「孤独」**といった繊細な感情まで丁寧にすくい上げました。感情を爆発させるシーンだけでなく、日常会話の中ににじむ決意や、常識外れの言葉の“強さ”を自然なトーンで表現。彼女の声には圧倒的な熱量と説得力が宿り、「島崎、わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」という突飛な宣言にも、観客が自然と心を寄せてしまう力がありました。

親友・島崎みゆき役の紡木吏佐は、成瀬という“異質な親友”を傍で見守る存在として、見事なバランス感覚を発揮。成瀬の行動に驚きつつも否定せず受け入れる包容力は、観客にとっての**「共感の窓口」**となり、物語のリアリティを支えました。彼女の抑えたトーンの演技は、成瀬という強烈な個性を受け止める“もう一人の主人公”として、島崎の繊細な人間性を的確に体現し、舞台の深みを引き出しました。

爆笑と感動を生む「漫才コンビ」のような掛け合い

本作の大きな魅力の一つは、成瀬と島崎の掛け合いです。岩田陽葵と紡木吏佐のコンビネーションは、まるで**「ボケとツッコミ」の漫才コンビ**のように軽快なテンポで展開されました。成瀬の常識にとらわれない言動に対し、島崎が冷静かつ的確なツッコミを入れるやり取りは、劇場をたびたび笑いに包みました。

しかし、単なる笑いで終わらないのがこの二人の絆の深さ。無茶ぶりを受け止める中で、島崎自身も成瀬の影響で成長していく過程が、会話の“温度の変化”として滲み出ており、笑いの中にじんわりとした感動が同居していました。舞台経験豊富な二人の絶妙な“間”の取り方、そして何より**“掛け合いを楽しんでいる”**ことが伝わる演技は、作品全体の魅力を根底から底上げしていました。

誠実な「普通」を演じた西浦と、リアリズムを追求した演出

物語の中で最も「普通」に近い存在である西浦航一郎を演じた梅田修一朗は、その「普通さ」に誠実な深みを与えました。成瀬の強烈な個性に衝撃を受け、葛藤しながらも、やがて彼女のまっすぐさに感化されていく西浦の揺れ動く感情を、梅田は声の細やかな表現で丁寧に描き出しました。岩田との対比的なシーンでは、声のトーン、間合い、呼吸のタイミングが絶妙で、相互理解へと向かうプロセスが観客の胸を打ちました。

また、本作の演出を手がけたのは、リアリズムと会話劇に定評のある野坂実氏。「声だけで世界を立ち上げる」という朗読劇の特性を最大限に活かし、セリフの間や登場人物の距離感を極めてリアルに演出しました。朗読劇のために書き下ろされたオリジナル音楽も、場面ごとの空気を繊細に彩り、言葉と音が一体となった“生きたドラマ”として物語を支えていました。

終演後のアフタートークでは、キャスト陣が「原作の人物像が強すぎて不安があった」と正直な想いを語りつつも、「日ごとに異なる解釈や化学反応が生まれるのが朗読劇の醍醐味」と、この舞台への深い愛情と手応えを語りました。

友情の温度、成長の痛みと喜び、弱さを抱えながらも前に進む人の姿—。朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』は、そのすべてが言葉と声、そして静かな舞台装置によって鮮やかに立ち上がり、観客の心に長く残る感銘を与えました。

<公演情報>

公演名: 朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』

会期: 2025年9月13日(土)~15日(月祝) ※全6公演

会場: 草月ホール

主催・製作: 松竹株式会社

チケット料金: SS席 11,000円、S席 9,900円、A席 8,800円、B席 6,600円(税込)

公式HP: https://plan.shochiku.co.jp/naruseakari_roudoku/


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