『売上・利益を増やす、 たった一つの方法』から学ぶ 第2回:内部留保を「攻め」の武器に変える「エクストラ内部留保」とは?

『売上・利益を増やす、 たった一つの方法』から学ぶ 第2回:内部留保を「攻め」の武器に変える「エクストラ内部留保」とは?

前回は内部留保の基本的な考え方と、多くの企業が陥りがちな間違いについてお話しました。今回は、山田麻美氏が提唱する「エクストラ内部留保」の具体的な仕組みと、内部留保を成長の原動力に変える方法を詳しく解説します。ただ貯めるだけの「守りの内部留保」から、積極的に投資して利益を生み出す「攻めの内部留保」への転換方法をご紹介します。


貯金が貯金を生む!?「エクストラ内部留保」の驚くべき仕組み

「お金がお金を生む」という言葉を聞いたことがありますか?個人の資産運用では当たり前の考え方ですが、実は企業の内部留保でも同じことが可能なのです。ただし、銀行に預けているだけでは、現在の低金利環境では資産は増えません。必要なのは、戦略的な「投資」の視点です。今回は、内部留保を成長エンジンに変える革新的な手法をご紹介します。

「エクストラ内部留保」の基本概念

「エクストラ内部留保」とは、従来の内部留保の概念を一歩進めた、より積極的な資金活用法です。通常の内部留保が「万が一に備えた貯蓄」であるのに対し、エクストラ内部留保は「確実なリターンを見込んだ投資」という性格を持ちます。
この考え方の核心は、内部留保を単なる「眠っている資金」から「働く資金」に変えることです。例えば、従業員のスキルアップに投資すれば生産性が向上し、結果として売上増加につながります。新しいシステムを導入すれば業務効率が改善され、人件費の削減や売上機会の拡大が期待できます。
重要なのは、これらの投資が短期的な支出ではなく、中長期的な収益向上につながる「資産」として機能することです。会計上は費用として処理されても、実質的には会社の収益力を高める投資なのです。
山田氏は本書の中で、「内部留保は会社の筋肉のようなもの」と表現しています。筋肉は使わなければ衰えますが、適切に鍛えれば強くなり、より大きな力を発揮できるようになります。内部留保も同様で、適切に「鍛える」ことで、より大きな利益を生み出す力を持つのです。

成功事例:製造業A社の変革ストーリー

本書で紹介されている製造業A社の事例は、エクストラ内部留保の威力を如実に示しています。同社は従業員50名の中小企業で、長年にわたって堅実な経営を続けてきましたが、売上の伸び悩みに直面していました。
A社の社長は当初、「景気が悪いから仕方ない」と現状維持を続けていました。しかし、山田氏のアドバイスを受けて、約1000万円の内部留保を以下の分野に戦略的に投資することを決断しました。
まず、生産設備の一部を最新機械に更新し、生産効率を30%向上させました。次に、従業員の技術研修に投資し、品質向上と作業スピードの改善を実現しました。さらに、営業担当者にデジタルマーケティングの研修を受けさせ、新規顧客開拓の手法を学ばせました。
これらの投資の結果、A社は投資から2年後に売上を40%増加させることに成功しました。投資額1000万円に対して、年間の利益増加額は約800万円。つまり、1年強で投資を回収し、その後は継続的に高い利益を生み出し続けているのです。

投資対象の選び方:ROI(投資収益率)の視点

エクストラ内部留保を成功させるためには、投資対象の選び方が重要です。山田氏は、投資判断の際に必ずROI(Return on Investment:投資収益率)を計算することを推奨しています。
ROIの計算式は、(投資によって得られる利益 ÷ 投資額)× 100 です。例えば、100万円投資して年間20万円の利益増加が見込める場合、ROIは20%となります。一般的に、ROIが15%以上であれば良い投資と考えられます。
ただし、ROIの計算では定量化しにくい効果も考慮する必要があります。従業員満足度の向上、ブランドイメージの改善、将来の事業機会の創出など、数字では表しにくいメリットも重要な投資効果です。
投資対象として特に効果が高いのは、以下の分野です:
人材投資:従業員のスキルアップ、資格取得支援、外部研修への参加など。人材の能力向上は、長期的に最も高いリターンをもたらします。
システム投資:業務効率化システム、顧客管理システム、在庫管理システムなど。初期投資は大きくても、継続的なコスト削減効果が期待できます。
マーケティング投資:ホームページ改善、SNS活用、展示会出展など。売上直結型の投資として、比較的短期間で効果を実感できます。

リスク管理:失敗しない投資のルール

エクストラ内部留保は積極的な投資手法ですが、リスク管理を怠ってはいけません。山田氏は、投資を行う際の基本ルールとして以下を挙げています。
分散投資の原則:一つの分野に集中投資するのではなく、複数の分野に分散して投資することで、リスクを軽減します。
段階的投資の原則:大きな投資を一度に行うのではなく、小さな投資から始めて効果を確認しながら段階的に拡大していきます。
回収期間の設定:投資を行う前に、何年で投資を回収できるかを明確にし、それが妥当な期間かを判断します。
定期的な効果測定:投資後は定期的に効果を測定し、期待した成果が得られていない場合は早めに軌道修正を行います。
また、投資の失敗例として多いのが、「流行に乗った投資」です。他社が成功したからといって、自社の状況を考慮せずに同じ投資を行うと失敗する可能性が高くなります。重要なのは、自社の強みや課題を正確に把握し、それに基づいた投資判断を行うことです。

実践的な投資計画の立て方

エクストラ内部留保を実践するためには、具体的な投資計画を立てる必要があります。山田氏が推奨する計画策定のステップは以下の通りです。
ステップ1:現状分析 自社の強み・弱み、市場環境、競合状況を詳細に分析します。特に、売上や利益の阻害要因を明確にすることが重要です。
ステップ2:投資目標の設定 「3年後に売上を30%増加させる」「業務効率を20%改善する」など、具体的で測定可能な目標を設定します。
ステップ3:投資候補の洗い出し 目標達成に必要な投資項目をリストアップし、それぞれの投資額と期待効果を概算します。
ステップ4:優先順位の決定 ROIの高さ、実現可能性、緊急性などを総合的に判断して、投資の優先順位を決定します。
ステップ5:実行計画の策定 具体的な実行スケジュール、担当者、予算配分を決定し、進捗管理の仕組みを構築します。
このプロセスを通じて、場当たり的な投資ではなく、戦略的で計画的な投資を実現できます。

次回予告

第3回では、エクストラ内部留保によって得られる具体的なメリットと、実際の企業が体験した劇的な変化について詳しくご紹介します。売上増加だけでなく、従業員のモチベーション向上、顧客満足度の改善、競合他社との差別化など、多面的な効果について事例を交えて解説します。内部留保の投資効果の全貌を、ぜひご確認ください。

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著者 山田麻美
カテゴリ
出版社 ぱる出版
出版日 2025年2月10日
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この本を書いた人
パーパス 持続可能な経営支援
職業 内部留保金活用戦略家
カテゴリ

#ビジネス

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