「会わない営業 だから、売れる」 vol.2 顧客の心をつかむ「シナリオ設計」の秘密

「会わない営業」において、顧客との接点が限られるからこそ重要になるのが「シナリオ設計」です。本記事では、書籍「13.会わない営業 だから、売れる」の著者である今野氏が提唱する、顧客の購買意欲を段階的に高める緻密なシナリオの構築法を深掘りします。なぜシナリオ設計が必須なのか、その具体的な構築手順と、多様な顧客ニーズへの対応策を、実践的なヒントを交えて解説します。


営業の成否を分ける「シナリオ設計」とは?

現代の営業において、顧客とのアポイントメントが困難になる中で、多くの営業パーソンが「何をどのように伝えれば、顧客は興味を持ってくれるのか」という壁に直面しています。この課題に対する強力な解決策となるのが、本書「会わない営業 だから、売れる」で詳しく解説されている「シナリオ設計」という概念です。シナリオ設計とは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを、まるで物語のように段階的に設計すること。それぞれの段階で顧客が抱くであろう疑問やニーズを予測し、それに応じた適切な情報やメッセージを、適切なタイミングで提供するためのロードマップと言えます。

なぜシナリオ設計が重要なのでしょうか?それは、顧客は一度にすべての情報を消化できるわけではないからです。人は、自分が抱えている課題やニーズが明確になるにつれて、具体的な解決策を求めるようになります。しかし、そのニーズが漠然としている段階で、いきなり商品の詳細説明や購入を迫られても、顧客は戸惑い、興味を失ってしまうでしょう。シナリオ設計は、この顧客の心理的なステップに合わせて、必要な情報を小分けにして提供することで、顧客の購買意欲を自然に、かつ段階的に高めていくことを可能にします。これは、従来の「押し売り」ではない、顧客に寄り添った新しい営業の形なのです。

シナリオ設計の基本原則:ニーズの段階的アプローチ

今野氏が提唱するシナリオ設計の基本は、顧客のニーズを3つの段階に分けてアプローチすることです。このシンプルな3つのステップを理解することが、効果的なシナリオを構築する上での第一歩となります。

1.ニーズに気づいてもらう(興味喚起)

顧客は、自身が抱える課題や問題にまだ明確に気づいていないかもしれません。ここでは、顧客が「もしかして、これは自分のことかも?」と感じるような、潜在的な課題や将来的なメリットを提示する情報を提供します。たとえば、業界のトレンドや一般的な課題、成功事例などを提示し、顧客自身に「このままでいいのか?」という疑問を投げかけることから始めます。この段階では、具体的な商品やサービスの紹介は控えめにし、あくまで顧客の意識を自社の提供する価値に向けることに注力します。

2.ニーズを強調し、購入意欲を高める(課題の具体化)

顧客が自身のニーズに気づき始めたら、次にそのニーズがどれほど重要で、解決することがどれほど価値があるかを強調します。放置することのリスクや、解決することで得られる具体的な成果を明確に示し、顧客の課題意識をさらに深めます。この段階で、自社の商品やサービスがその課題をどのように解決できるのか、具体的な事例やデータを用いて分かりやすく伝えます。単なる機能説明ではなく、顧客の未来がどう変わるか、という視点で語ることが重要です。

3.購入・申し込みを促す(行動喚起)

顧客のニーズが明確になり、自社の商品やサービスがその解決策として有効であることを理解したら、いよいよ具体的な行動を促します。ここでは、購入に至るまでのステップを明確に示し、期間限定のオファーや特典、無料相談の案内など、顧客が行動を起こしやすいような動機付けを行います。顧客が迷うことなく次のステップに進めるよう、手続きの簡素化や問い合わせ先の明示も不可欠です。この一連の流れを、メールやウェブコンテンツ、オンラインセミナーなど、様々なデジタルチャネルを組み合わせて実現していくのです。

多様化する顧客ニーズへの対応:シナリオの分岐と最適化

大規模なイベントの集客事例でも明らかになったように、顧客のニーズは非常に多様です。一律のメッセージでは、すべての顧客に響かせることはできません。今野氏は、多様なニーズに対応するために、顧客が感じているニーズを類型化し、そのニーズごとに前述の1~3の基本シナリオを作るという方法を推奨しています。

例えば、オンラインセールス向けのツールを販売する場合を考えてみましょう。ある顧客は「リード獲得数を増やしたい」と考えているかもしれませんし、別の顧客は「既存顧客のフォローアップを効率化したい」と考えているかもしれません。さらに別の顧客は「営業コストを削減したい」と考えている可能性もあります。これらの異なるニーズを持つ顧客に対して、同じシナリオでアプローチしても効果は薄いでしょう。

そこで、顧客の抱える課題や関心に応じてシナリオを分岐させます。例えば、「リード獲得」に関心を持つ顧客には、リードジェネレーションに特化した情報や成功事例を提示するシナリオを、「コスト削減」に関心を持つ顧客には、コスト削減効果を強調するシナリオを用意するのです。これにより、顧客は「ああ、これは自分が必要としているものだ」と強く感じ、興味を持ち続けることができます。デジタルツールを活用すれば、顧客の行動(ウェブサイトの閲覧履歴やメールの開封状況など)に応じて、自動的に最適なシナリオへと誘導することも可能です。このパーソナライズされたアプローチこそが、「会わない営業」における顧客エンゲージメントの鍵となります。

シナリオ設計の実践:デジタルツールとコンテンツの活用

シナリオ設計を効果的に実践するためには、適切なデジタルツールの活用が不可欠です。メールマーケティングツール、CRM(顧客関係管理)システム、ウェブサイトのトラッキングツールなどを組み合わせることで、顧客の行動を分析し、よりパーソナライズされた情報提供が可能になります。例えば、顧客が特定のページを閲覧した場合に、そのテーマに関連する次のメールを自動送信するといったオートメーションを設定できます。

また、コンテンツの質も非常に重要です。顧客が興味を持ち、価値を感じるような質の高いコンテンツ(ブログ記事、ホワイトペーパー、動画、ウェビナーなど)を継続的に提供することで、顧客の「学び」を促進し、信頼関係を構築することができます。単なる商品の説明ではなく、顧客の課題解決に役立つ情報や、業界の知見を提供することで、営業パーソンが「信頼できる情報源」としての地位を確立できるのです。今野氏は、これらのコンテンツを、シナリオの各段階に合わせて最適に配置し、顧客の購買意欲を段階的に高める戦略を詳細に解説しています。

シナリオ設計がもたらす営業の未来と、あなたの次なる一歩

「会わない営業」におけるシナリオ設計は、単なる営業手法の変更に留まりません。それは、顧客中心の思考へのシフトであり、デジタル時代における営業のあり方を根本から変革するものです。顧客との接点が希薄になる現代において、いかにして顧客の心をつかみ、購買へと導くか。この問いに対する今野氏の回答が、この緻密なシナリオ設計に集約されています。

本書「会わない営業 だから、売れる」は、具体的なシナリオの構築方法から、デジタルツールの活用法、そして顧客心理を読み解くための洞察まで、実践的なノウハウが満載です。従来の営業手法に限界を感じている方、より効率的かつ効果的な営業戦略を求めている方にとって、本書は間違いなく羅針盤となるでしょう。

次回予告:書籍から得られる具体的なメリットと学び「無駄をなくし、成果を最大化する戦略」

第3回では、書籍「会わない営業 だから、売れる」を読むことで得られる具体的なメリットと、明日から実践できる学びについて深掘りしていきます。無駄なアポイントを減らし、本当に価値のある商談に集中するためにはどうすれば良いのか? 効率的な営業活動を実現するための戦略とその具体的なステップを解説します。

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